タイトル

不動産投資 失敗への理解

法は、認定制度を通じて認定団体の信頼性を確保し、それらの団体の自主的取組みによる苦情解決・あっせん業務の業界横断的な取組みを推進しようとしているわけです。
本書の各箇所で説明したように、投資家は、発行会社による不実の情報開示、市場における不公正な取引、金融商品取引業者による違法行為などの結果として損害を被ったときには、金融商品取引法、金融商品販売法、または民法等の一般法に基づいて、違法行為者などに損害の賠償を請求することができます。
有価証券の売買やデリバティブ取引は自己責任の原則に従って行われるべきものですが、不実の情報提供や不当な投資勧誘その他の違法行為によって投資家の投資判断が歪められたり、市場で形成される価格が歪められた結果として投資家が損害を被った場合には、自己責任の原則は通用しません。
違反行為者に対する投資家の責任追及は、責任が追及されている者以外の市場関係者が将来、法違反をしないよう抑止するという機能を有しています。
このように私人による責任追及行為を通じて、関係者(被告となりうる者)に法令を遵守して行動するよう仕向けることを、私人による法のエンフォースメントといいます。
違反行為の抑止には、刑事責任の追及のほうが有効だとする見方もあります。
しかし、刑事罰が用意されていない規定もありますし、証券取引等監視委員会や検察庁の調査資源は限られていますので、投資家が自己の利益に従って損害が発生していないか目を光らせていることは、違反行為の抑止に効果的です。
また、刑事責任と異なり民事責任は過失があれば発生するので、関係者は違反が生じないように注意を払うことになりますし、無過失責任が課せられている場合(18条、21条の2、金融商品販売法5条)には、より多くの注意を払うことになるでしょう。
日本では、証券会社の役職員による不当勧誘を理由に損害賠償請求訴訟を提起する例は比較的多いのですが、相場操縦行為者に対する訴訟とか粉飾決算を行った発行者の関係者に対する訴訟はほとんどありません。
前者では損害が多額に上ることがあるのに対し、後者では個の投資家が被る損害が少額であることが多いので、費用を払ってまで訴訟を提起するインセンティブに欠けるからでしょう。
同一の違法行為によって多数の者が性質の同じ損害を被るときに、その請求を糾合する制度として、アメリカにはクラスアクション(集団訴訟)があります。
クラスアクションでは、たとえば○月○日から○月○日までの間に取引所市場でA銘柄を購入した者(クラスメンバー)を代表して、特定の投資家が訴訟を提起することができ、訴訟が提起されると、裁判所が適当と認める者を訴訟追行者に指名しクラスアクションを認可します。
すると、潜在的なクラスメンバーに対して告知がなされ、明示的に訴訟から離脱する意思を表明した者以外はすべてクラスに含められます。
この結果、訴訟追行者は莫大な額の損害賠償を請求することが可能になるのですが、多くのクラスアクションは裁判上の和解で終了しています。
アメリカでは、クラスアクションは濫用的な訴訟提起を招き、企業等による積極的な情報開示をリスクの高いものにするとの批判があり、1995年にクラスアクションを難しくする改革が行われました。
しかし最近では、クラスアクションの弱体化がエンロン事件などの2001年ごろの会計不正事件の遠因になったと批判されています。
法体系の異なる国の制度を導入することは難しいことですが、わが国でもクラスアクション類似の制度を構築できないか、真剣に検討してみる必要があるでしょう。
取引所において有価証券の売買取引が約定されると、証券の受渡しと代金の支払いをする必要が生じます。
現在の制度では約定から4日目にこれらの決済が行われますが、この決済期間を翌日まで短縮し、かつ証券の受渡しと代金の支払いとを相互に条件づけるDVPを実現するために、有価証券のペーパーレス化(電子化)が図られてきました。
ペーパーレス化すれば、有価証券の保管から生じるコストやリスクも減らすことができます。
有価証券のペーパーレス化のための法制の整備は、コマーシャルペーパー(CP)、国債・社債の順に進み、CP・国債については平成15年からシステムが稼働しています。
株券・新株予約権付社債券等については、平成16年改正の社債株式振替法により、帳簿の記録によって権利を移転させる振替の仕組みが整えられ、平成21年6月までの間で政令で定める日に、上場証券の振替制度への移行が一斉に行われる予定です。
現在は、そのためのインフラの整備が関係者の間で進められています。
振替制度への移行後に株式を譲渡するには、投資家は、銀行、金融商品取引業者等の口座管理機関に口座を開設しておかなければなりません。
そして、譲渡側の投資家が振替えの申請をすると、その投資家の振替口座簿に株式数の減少の記録が、譲受側の投資家の振替口座簿に株式数の増加の記録がなされます。
これにより、譲受側の投資家は株式という権利を取得したことになります。
もっとも、振替制度への移行後も、売買注文の約定は取引所または証券会社等を通じて行われることに変わりはありません。
上場会社が新たに有価証券を発行する場合は、投資家からの払込みを確認した上場会社からの通知により、口座管理機関が投資家の振替口座簿に株式の銘柄および数を記入し、これにより、投資家は株式を取得します。
以上のように、電子証券の振替を行うために口座の開設を受けて振替を行う行為を、金融商品取引法は金融商品取引業を構成する行為と位置づけ(2条8項17号)、口座管理機関の振替業務を有価証券等管理業務として規制しています。
金融機関が振替業務を行う場合には、金融商品取引業の登録は要りませんが(33条3項)、有価証券等管理業務に関する規定は金融機関にも適用されます。
金融商品取引法は、有価証券を証券または証書が発行されている権利(2条1項)と証券または証書が発行されていない権利(2条2項)に分けるという伝統的な定義形式を維持しました。
そこでは、振替株式(電子株券)は、株券という有価証券に表示されるべき権利(有価証券表示権利)であるが有価証券に表示されていないもの(2条2項柱書き)という位置づけです。
しかし、上場株券をはじめ上場証券が電子化されれば、証券または証書に表示される権利を基本的な類型とする有価証券の定義規定は、見直す必要があるでしょう。
2資本市場のグローバル化国境を越える資金の移動はますます容易になっています。
このことは、企業にとっては世界中の投資家から資金を調達できることを、投資家にとっては世界中の投資対象に投資できることを意味します。
このような資本市場のグローバル化への対応を、証券取引法は最近の改正で定め、それらは金融商品取引法に引き継がれています。
まず、企業の資金調達の側面を見ると、外国企業が日本の投資家から公募によって資金を調達したり、日本の取引所に有価証券を上場する場合には、日本法の基準によるディスクロージャーを日本語で行うのが原則です。
日本法は日本国内の投資家の保護を目的としているからです。
これに対し、平成17年改正の証券取引法は、外国企業等に外国基準によるディスクロージャーを英語で行う道を開きました(英語開示)。
一定の外国会社は、有価証券報告書に代えて、外国基準で作成され英語で記載された外国会社報告書を提出することができます(2448項・9項)。
半期報告書、四半期報告書、内部統制報告書にも同様の扱いが定められています。

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